outcry-ongakuの語り場

電音部に関する記事をちょくちょく書いてます!(不定期更新)

【電音部ノベル感想】裏テーマ「破壊と創造」について考える

 この記事は、「電音部ノベル」のネタバレ内容を含みます。まだ、読んでいないという方は是非、読んでから当記事を読む事をおススメします。

電音部ノベルって何?という方は紹介記事を拙筆ながら書いていますので、ご覧ください。

 

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はじめに

 電音部ノベルSEASON.0完結!という訳で、月曜日からの楽しみが無くなってしまって悲しい!wと、本当に思わされる名作でした。まずはノベルの作者である久慈マサムネ先生と世界観設定に関わった伊澄アキ先生、そして子川さんや石田さんなどのプロデューサー陣に感謝を!本当に良作を無料で読ませていただきありがとうございます!そういうわけで、今回は感想も兼ねて、電音部ノベルで個人的に裏テーマと思った「破壊と創造」を基に「こういう所をもう一回見直したいよね!」という話をしつつ、今後の展開の展望もつらつらと書いていきたいなと思います!

電音部だから、DJテーマだから出来た「破壊と創造」の物語

日高零奈から見える「破壊と創造」

 本作の主人公である日高零奈は全編を通して、関わる存在が抱える問題を解決するという、いわば「デウス・エクス・マキナ」として活躍していた。それが顕著だったのは「ハラジュク編」での雛、紫杏と些細な事で仲違いを起こし、現実を知って打ちひしがれる美々兎を励ますシーンであろう。この時の美々兎の状態を過去の自分の家族に起きた事と重ねている事が描写されている。これ以外でも、ふたばのアイドルにはなれないという本音への回答であったり、アザブ編で魅せたクラブミュージックの考えなども全て零奈の”過去”に結びついている。また、アキバ編でレコードを持ち込んでDJをやろうとしたり、アザブ編でのバイナリの使用など間接的にも”過去”と零奈を結び付けていた。

 しかし、シブヤ編にて”過去”を憎む海月や、”今”に重点を置く火凛の存在が零奈のそういったパーソナリティに影響を与えていく。過去の出来事から、ただひたすらに「自分以外の他人の為に」だった行動やプレイが、「自分を表現し、相手に知ってもらう」という形に変化していく。作品内でも登場するが、「Blank Paper」の歌詞である「歴史が組み上げた構造 壊すぐらいの青さで」が零奈の歌い分けになっているように「過去に拘る自分の”破壊”と、自分を曝け出す事によって理解してもらえる新たな”日高零奈”の”創造”」が物語の重要なワンシーンとして描かれている。

DJが持つ「破壊と創造」との親和性

 零奈に限らず、和音も、ふたばも、そして他校の面々も何かしらの「破壊と創造」を向かえながら、新しい成長を遂げている事が作品内からもわかる。この「破壊と創造」というキーワードの親和性は彼女達が行うDJにもいえる事だ。DJは時として、その曲単体が持つ文脈性を破壊した上で、観客の熱狂と共に曲同士が繋がる事で新たな文脈性を創造する。この「クラブ内でのみ成立する文脈性」について、火凛も作中でクラシックの「一回性の音楽」と同質なクラブでの体験と述べている。音楽と音楽をただ繋げるのではない、「破壊して創造する」というDJのスピリットが物語における「破壊と創造」により一層深みを持たせている。

今後の物語の展望と制作陣のクラブ・カルチャーへの深い造詣

 正直、初っ端からこのレベルの物語を出されると「本当にここから続くの!?」と心配になるが、世界観に関するお話や、過去に関わるお話。また、アキバ以外の他校同士の交流などが残っているのでまだまだ書けるのだろうなと思われる。上述したが、制作陣のクラブ・カルチャーへの造詣の深さというのには驚いてしまう。文章のみで、クラブの臨場感を再現し、ストーリーに深みを増す要素としてしっかりと機能させている。「電音部じゃなくても成り立つ」ストーリーではなく、「電音部でなくては成り立たない」ストーリーとなっている。そういった面でも、これからの物語の展開も期待できると個人的には感じている。

おわりに

 電音部ノベル、本当に何度も読み返したくなる名作だな…とこうやって感想文を書いてると思います。この物語を書くまでに綿密に世界観やストーリーラインを考えて、骨子をしっかりと組み立てた上でコンポーザーに楽曲制作を依頼して…etcと相当の熱意で成り立っている事が伝わりますし、ファンとしても、「ああ、本当に制作陣に愛された作品なんだな」と更に応援する気持ちになりました!最後に、もう一度制作陣の方々に感謝を!本当にありがとうございます!